供給途絶対策・事業承継

Supply disruption countermeasures and business succession

地方経済局との連携も通じ、政府が提供する補助金・税制・金融等の経営支援ツールの活用を促進します。

地方経済産業局では、地域の関係機関と連携し、日頃より中小企業等への支援を実施しています。NSCPでは、地方経済産業局が各地方に点在する原子力サプライヤの事業課題・実態を把握し、経済産業省との情報共有を進めながら、各サプライヤへのきめ細かい支援の提供を実施していきます。
参照:第6回革新炉ワーキンググループ資料(18ページ)

各サプライヤからのご意見やご要望、その他補助金・税制に関するお問合せはこちらより、該当する地域の地方経済産業局にご連絡ください。

原子力サプライヤが活用できる支援施策集

原子力分野において利用可能な、主な補助金についてご紹介します。
支援施策集の一覧はこち(2024年7月30日時点版)よりご確認ください。

原子力産業基盤強化事業

本事業では、原子力利用の安全性・信頼性を支えている原子力産業・サプライチェーン全体の強化のため、
①世界トップクラスの優れた技術を有するサプライヤの支援
②技術開発・再稼働・廃炉などの現場を担う人材の育成
等に取り組むこととしています。

これらの取組を通じ、原子力利用先進国として我が国の有する人材・技術・産業基盤を維持・強化し、不断の安全性追求と技術力向上に取り組むとともに、電力の安定供給に向けた原子力産業の構築を図ることを目的とします。

【事業支援例】
■供給途絶リスクのある素材・部品の製造技術・事業の代替サプライヤへの継承
デジタル技術の活用等による現場の製造ノウハウの高度化・技術継承
海外市場獲得を狙うサプライヤの海外規格の取得

~支援部品例~

ものづくり補助金

中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援します。

申請類型 補助上限
※従業員規模により異なる
補助率
省力化
(オーダーメイド)枠
5人以下: 750 万円
6~20 人: 1,500 万円
21~50 人: 3,000 万円
51~99 人: 5,000 万円
100人以上: 8,000 万円
1/3~1/2 ※
小規模・再生 2/3※補助金額 1,500 万円までは 1/2、1,500万円を超える部分は 1/3
製品・サービス高付加価値化枠:
通常類型
5人以下: 750 万円
6~20 人: 1,000 万円
21人以上: 1,250 万円
1/2
小規模・再生 2/3
新型コロナ回復加速化特例 2/3
製品・サービス高付加価値化枠:
成長分野進出類型
(DX・GX)
5人以下: 1,000 万円
6~20 人: 1,500 万円
21人以上: 2,500 万円
2/3
グローバル枠 3,000万円 1/2
小規模 2/3

 

【大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例】
補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者に対し、上記枠の補助上限を100~2,000 万円、更に上乗せ(新型コロナ回復加速化特例を除く)。

 

詳細は、ものづくり補助金総合サイトをご覧ください。

中小企業省力化投資補助事業

中小企業等の売上拡大や⽣産性向上を後押しするために、人⼿不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援します。これにより、中小企業等の付加価値額や⽣産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的とします。

IoT、ロボット等の人⼿不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進します。

申請類型 補助上限
※従業員規模により異なる
補助率
省力化投資補助枠
(カタログ型)
従業員数5名以下:200万円(300万円)
従業員数6~20名:
500万円(750万円)
従業員数21名以上:
1000万円(1500万円)
※賃上げ要件を達成した場合、

()内の値に補助上限額を引き上げ
1/2

 

詳細は以下、中小企業省力化投資補助事業のHPをご覧ください。
https://shoryokuka.smrj.go.jp/

その他の支援施策

経済産業省の予算支援例

供給途絶対策・事業承継に係る取組の実績をご紹介します。

日本ギア工業の補助金活用事例

原子力発電所向け電動弁の駆動装置(アクチュエータ)を製造している日本ギアでは、原子力用アクチュエータの技術員の技術継承・世代交代の機会が減少している中、製造・保守基盤の長期的維持に向け、経済産業省の「原子力産業基盤強化事業」の補助金を活用し、製造・保守教育での3Dデータの活用やイラスト・動画を多用した手順書の作成を進めています。詳細はこちらをご確認ください。

3Dデータを活用したアクチュエータの図面

TVEの補助金活用事例

原子力発電所向けの高温高圧バルブを製造しているTVEでは、経済産業省の「原子力産業基盤強化事業」の支援を受け、バルブ鋳型の木型から発泡型への移行、デジタル技術を活用した鋳型造形プロセスイノベーションを進め、少量多品種のバルブ製造管理プロセスの伝承を進めています。令和5年度の事業では、実際に3Dデジタル発泡造形装置導入後の鋳鋼品の品質、鋳型製作のリードタイム、コストの評価を実施しました。詳細はこちらをご覧ください。

原子力向け仕切弁 弁箱鋳造プロセス検証

一般産業用工業品の採用に向けた手法の整備とガイドラインの発行

原子力施設の安全機能に係る機器は、厳格な品質管理が求められています。その管理を個々のサプライヤが負担する仕組みは、事業環境上の課題となっています。そこで、サプライチェーンにおける品質管理の役割を適切に見直し、品質を維持しながら、一般産業用工業品の採用を可能とするプロセスが求められていました。
このような課題に対応するため、日立GE、三菱重工、東芝ESS、IHIの4社は共同で「原子力産業基盤強化事業」の支援を受け、「一般産業用工業品の採用における安全性・信頼性を確保する手法の整備」として、一般産業用工業品を採用するにあたってのガイドラインの素案を作成しました。さらに、日本電機工業会(JEMA)は、上記のガイドライン素案を基に「一般産業用工業品採用ガイドライン」を制定・公開しました。

NSCPでは、産業界による一般産業用工業品の採用(CGD)の取り組みを支援していきます。

JEMAが制定した「一般産業用工業品採用ガイドライン」(表紙)

 

デモンストレーションを実施したリードスイッチ

3Dプリンタの活用に向けた取組

3Dプリンティングを活用することにより、部品製造にかかる期間・コストの短縮、撤退したサプライヤーの補完、従来手法では不可能であった最適形状の追求等が可能になることが期待されます。三菱重工と東芝ESSは、「原子力産業基盤強化事業」の支援を受け、令和元年度より3Dプリンティングによる部品製造に関する技術開発を実施しています。また、国内での実用化に向けて、産業大で日本機械学会(JSME)での規格化に必要なデータ取得等も進めています。
詳細は、原子力小委員会の資料(26ページ)および原子力産業基盤強化事業報告書を参照ください。

供給途絶対策
・事業承継に係る事例

供給途絶対策・事業承継に係る事例をご紹介します。

一般産業用工業品の採用に向けた取組

一般産業用工業品の採用(CGD:Commercial Grade Dedication)は、一般品の機能・性能が要求仕様を満たすことについて、必要に応じてサプライヤの協力を得ながら購入者が確認(評価・検証)し、一般産業用工業品として原子力施設に供給可能とする手法であり、品質レベルを維持したまま、サプライヤの管理労力を低減でき、サプライヤの健全な維持が期待されています。
2024年3月14日(木)に開催した「第2回原子力サプライチェーンシンポジウム」では、セッション2-C:サプライチェーン強化の取組(供給途絶対策)において、CGDに関するパネルディスカッションが行われ、プラントメーカー、バルブメーカーにおけるCGDへの期待、取組状況および今後の課題について議論が交わされました。主な内容は次の通りです。詳細は第2回原子力サプライチェーンシンポジウムの動画をご覧ください。

  • サプライチェーン全体で品質を維持するため、経済産業省の委託事業において、プラントメーカーが主体となりCGDプロセスを草案し、電力会社や学術界のご意見を反映したガイドラインが作成された。(ガイドラインの詳細は、「経済産業省の予算支援例:一般産業用工業品の採用に向けた手法の整備とガイドラインの発行」をご参照ください)
  • CGDの効果として、サプライヤの管理労力が軽減し、購入者は品質レベルを維持した供給が可能となる
  • CGDは、原子力品としての供給が困難となった場合や、設計変更、事業撤退となった製品への適用が期待されている
  • CGDの実製品への適用においては、事業者、購入者、サプライヤが相互に理解しながら進めることが重要である
  • CGDは米国をはじめ海外で広く使われており、海外原子力市場への販路拡大の機会になる

参考:第2回原子力サプライチェーンシンポジウム
セッション 2-C:サプライチェーン強化の取組(供給途絶対策)」(00:57:44~)

アトックスの事業承継事例

アトックスは、原子力関連施設のメンテナンスを草創期から手掛け、放射線管理、放射性廃棄物処理とともに機器の点検・保守並びに工事業務、除染等、幅広く事業を展開してきました。

一方、川崎重工業は約半世紀に亘り商用原子力発電所等に多数の開発・納入実績を有しておりましたが、「エネルギー・環境ソリューション」の中核事業として水素エネルギー関連事業に経営資源を集中したい経営方針と、エンジニアリング部門の強化を目指すアトックスの経営方針とが合致し、2021年3月26日に原子力事業の「事業譲渡契約」の締結に至りました。詳細はこちらをご確認ください。

 

参考情報

一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)による統計情報

一般社団法人 日本原子力産業協会(JAIF)による産業動向調査

国際機関等の原子力サプライチェーンに関する報告書やワークショップ

  • IAEA「原子力発電所の安全系での一般産業用工業品の活用における適合性評価
    (2023年12月)
    IAEAによる、原子力発電所の安全系で用いられる一般産業用工業品の適合性評価のアプローチを示した文書。一般産業用工業品の活用における基本的な考え方や、良好事例、品質管理などについて記載されています。
  • WNA「世界原子力サプライチェーン報告書2023」(2023年8月)
    原子力発電所のサプライチェーンの現状、機会および課題について、市場の視点から考察した世界原子力協会(WNA)による報告書。国際的にサプライチェーンを最適化する方策についての提言も行われています。
  • 米国DOE「米国における原子力エネルギーサプライチェーンの詳細評価
    (2022年2月、日本原子力産業協会によるポイント紹介)
    米国エネルギー省(DOE)の原子力サプライチェーンの状況や今後の見通しについて記した報告書の、日本原子力産業協会によるポイント紹介。世界と米国における原子力市場の予測についても記載されています。