- 溶接技能人材意見交換会
NSCPではこの度、溶接技能者の育成に取り組んでいる企業による意見交換会を実施しました。原子力向けプレファブ配管の加工・組立、さらに溶接技能者の育成を行っている太平電業の工場を見学し、原子力分野での溶接事業を実施している企業の皆様から、溶接技能人材の確保・育成に関する課題や取り組み状況などについてお話を伺いました。
溶接技能人材意見交換会目次
1 溶接技能人材の確保における課題
BWRプラントの再稼働が進んでおり、工事やメンテナンスの人材確保が必要になってきていると思われますが、溶接技能人材の確保において課題に感じていることはありますでしょうか?
(参加企業の回答)
・溶接士の人数としては足りていない。あるいは平時に足りていても原子力発電所などでの工事件数がピークになる時期は足りない状況である。また、溶接士の高齢化が進んでおり、世代交代に課題を感じている。今後、BWRプラントの再稼働が進んで溶接士の需要が高まることが予想され、人材確保の戦略を考えていく必要性を感じている。
・溶接士の担い手が少なく、他業種との奪い合いとなっている。採用活動としては、OBによる学校訪問やインターンシップの実施、工場見学会の開催などを実施している。地元の学校だけでなく、離れた地域にある学校にも採用活動をすることで、採用人数を増やすことができた事例もある。
・全社的な賃上げや初任給増額、資格取得手当の導入により待遇改善を実施している。また、家賃補助など福利厚生の充実化や、メンター制度など教育体制の整備を実施し、離職防止を図っている。
2 溶接技能人材の育成や技能継承における課題
溶接技能者の育成や溶接資格取得には長い時間を要することになりますが、人材育成や技能継承において課題に感じることはあるでしょうか?
(参加企業の回答)
・自社の敷地内に訓練用ブースやスペースを設け、先輩社員によるOJTでの教育を実施し、教育体制の改善も進めている。資格取得のための教育も必要ではあるが、若手溶接士の個々の技量習得度を把握することも重要だと考えている。
・震災以降、原子力発電所の工事案件が減少していたため、現場作業の経験を積む機会が喪失しており、現場における技能継承が課題である。ベテランと若手の溶接士が一緒に現場作業にあたるようにし、現地でのOJTにより技能継承を行っている。
・従来は熟練の溶接士による手作業に頼っていた作業を自動化し、技能継承の負担を軽くすることができた。自動化設備は一品一様の製品には使用しにくいものの、熟練溶接士の技能を自動溶接機に反映させるなど技能継承のための工夫が行われている。
・社外で開催される技術交流会や技能五輪などに参加することで、若手溶接士の技能向上に努めている。
3 原子力業界全体の抱える課題の共有
原子力サプライチェーン維持・強化に向けてサプライヤのご立場から業界全体に期待することはありますでしょうか?
(参加企業の回答)
・採用活動をしている中で、学生の方が原子力に対してネガティブなイメージを持っていると感じることがあるため、政府には原子力のイメージ改善のための広報活動にもっと取り組んでほしい。
・原子力施設の溶接士技能認証標準に適合する溶接士技能資格の有効期間は2年となっている。工事案件の延長などにより現地派遣の途中で有効期限が切れてしまい、資格の再取得が必要になることがあり、再取得にかかる時間と費用が大きな負担となっている。有効期間の延長を可能にするなど制度の改正を検討してほしい。
・原子力サプライチェーンの維持・強化のため、人材確保・育成に関する支援を今後も継続してほしい。