
概要
ABOUT
原子力利用のさらなる加速
新規建設の実現に向けて
日本原子力産業協会は、国内外から広く関係者の参加を得て毎年春に「原産年次大会」を開催しています。エネルギー・原子力開発利用上の重要な問題についての意見発表や討論を通して、課題とその解決の方向性に関し関係者が認識や意識を共有するとともに、交流・相互理解に資することを目的としています。
世界的な原子力の積極的な活用への機運は極めて高く、脱炭素電源としての原子力の価値が発揮されるよう様々な努力がなされています。そうした中、我が国では、原子力発電など脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが不可欠であると明記された第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。
第58回大会は、原子力利用のさらなる加速のため、第7次エネルギー基本計画のもとでの実効性ある事業環境整備の必要性を念頭に、原子力産業界が抱える課題解決の鍵を握る新規建設の実現に向け、資金調達・投資回収スキーム、サプライチェーン、人材確保・育成などに対する産業界の取り組みと課題解決の方向性について議論します。また、福島の地元関係者の復興努力を共有するとともに、将来を担う若手世代と原子力産業の未来を展望する機会とします。
プログラム
PROGRAM
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(火)
10:00
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11:30
11:30
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11:50
Fireside Chat
新規建設に向けた課題
新規建設を俯瞰的に捉え、続く各セッションで扱う資⾦調達・投資回収、サプライチェーンおよび⼈材確保・育成に係る議論の呼び⽔となるような問題提起や課題を共有する。
<スピーカー>
フラマトムジャパン株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本原子力産業協会 理事長
13:30
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15:30
セッション1
新規建設に向けて:資金調達と投資回収
電⼒⾃由化の下で⺠間企業が実施する海外の原⼦⼒プロジェクトに対する資⾦調達・投資回収スキームの事例を共有するとともに、今般、第7次エネルギー基本計画で⽰された事業環境整備の⽅向性が実効性ある制度設計に結び付くための課題と対応策について、海外の有識者の⽰唆を踏まえ議論する。
<モデレーター>
有限責任監査法人トーマツ パートナー / パブリックセクター・ヘルスケア事業部長 / エネルギーセクターリーダー
<パネリスト>
ハントン・アンドリュース・カース 東京事務所長 国際原子力部門長
英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省 原子力インフラ・ケイパビリティ・国際担当 副ディレクター
一般社団法人 日本経済団体連合会 資源・エネルギー対策委員会 企画部会長代行
株式会社みずほ銀行 産業調査部 次長
経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課長
16:00
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18:00
セッション2
新規建設に向けて:海外事例に学ぶサプライチェーンの課題
東⽇本⼤震災後の既設炉の再稼働の遅れや⻑期に亘る新設の中断で、⽇本の原⼦⼒サプライチェーンは厳しい状況にある。わが国の新設プロジェクトを円滑に進めるため、今後、⽇本が留意すべきサプライチェーンの課題と対応について、海外の良好事例や教訓とともに議論する。
<モデレーター>
電気事業連合会(FEPC) 原子力推進・対策部会 副部会長
<パネリスト>
米原子力エネルギー協会(NEI) 副理事長(政策・渉外担当)
仏原子力産業協会(GIFEN) 国際協力マネージャー
韓国原子力産業協会(KAIF)副会長/COO
㈱日立製作所 執行役常務 原子力ビジネスユニットCEO /
一般社団法人 日本電機工業会 原子力政策委員会 前委員⾧18:15
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20:00
レセプション
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(水)
10:00
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12:00
セッション3(福島セッション)
福島第一廃炉進捗と地元の復興への取り組み
福島第一原子力発電所事故の反省と教訓は、原子力政策を進めるうえでの原点と言える。同発電所の廃炉進捗状況(燃料デブリ取り出しやALPS処理⽔放出など)を共有するとともに、現在の浜通りの復興状況について、浜通りに居住し復興に努める⽅々の視点から直⾯している課題や展望を披露していただき、こうした⽅々から原⼦⼒業界へのメッセージを受け取る機会とする。
<講演者>
東京電力ホールディングス株式会社 執行役副社長 福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント 廃炉・汚染水対策最高責任者 原子力・立地本部副本部長
<モデレーター>
東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授
<パネリスト>
株式会社信和工業 代表取締役社長
富岡町議会議員
あまの川農園 園主
13:15
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13:35
13:50
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16:20
セッション4
新規建設に向けて:学生と描く原子力産業の未来
原⼦⼒産業では幅広い⼈材が活躍しており、新たな技術の活⽤が進みつつある。学⽣に原⼦⼒の価値を伝えるとともに、新規建設に携わる国内外産業界関係者等から最先端の技術動向、原⼦⼒業界の魅⼒およびやりがいを共有し、学⽣とともに⾰新的な技術を活かして産業を進化させる原⼦⼒産業の未来を展望する。
<モデレーター>
早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 共同原子力専攻 教授
<パネリスト>
日立GEニュークリア・エナジー(株) 原子力計画部プラント 計画グループ技師
東芝エネルギーシステムズ(株) 磯子エンジニアリングセンター 原子力システム設計部 システム計画グループ マネージャー
三菱重工業株式会社 原子力セグメント 炉心・安全技術部 炉心・放射線技術課 炉心開発チーム 主任
フラマトム社 原子力技術者
<学生パネリスト>
福井工業高等専門学校 専攻科 環境システム工学専攻 2年生
名古屋大学 大学院 工学研究科 総合エネルギー工学専攻 修士1年生
東京都市大学 理工学部 機械システム工学科 4 年生
芝浦工業大学 理工学研究科 社会基盤学専攻 修士1年生
16:20
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16:25
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出展機関・企業
B7ホール
4⽉8⽇ 10:00~18:00
4月9日 10:00~16:25
- 株式会社ムロオシステムズ
- Bertin Technologies
- サイクライフ・ジャパン株式会社
- 国⽴研究開発法⼈⽇本原⼦⼒研究開発機構
- Orano Japan株式会社
- WIN (Women in Nuclear) – JAPAN
- 東京科学⼤学中瀬研究室 & ⽇本原⼦⼒学会学⽣連絡会
- Global Young Generation
- 4⽉8⽇のみ ライブペインティングパフォーマンス
- 4⽉9⽇のみ 福島物産展
B5ホール
4月8日 18:15~20:00
- 三菱重⼯業株式会社
- 東芝エネルギーシステムズ
- ⽇⽴GEニュークリア・エナジー株式会社
- ⽇本ヴィクトリック株式会社
- 六菱ゴム株式会社
- ティージーコンサルティング株式会社
- Onet Technologies株式会社
- EnergySolutions
- 原⼦⼒発電環境整備機構
- Global Young Generation
- 福島物産展
*順不同
講演者紹介
総括
SUMMARY
第58回原産年次大会 総括
当協会は、2025年4月8日、9日、東京国際フォーラムよりオンライン配信併用にて、「原子力利用のさらなる加速―新規建設の実現に向けて」を基調テーマに第58回原産年次大会を開催した。本大会には、国内外の政府、自治体、研究機関、電気事業者、メーカーなどの原子力関係者、大学関係者、一般市民、海外参加者(25ヶ国・1地域、3国際機関から65名)など約740名が参加した。
第58回大会となる本大会は、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を踏まえ、実効性ある事業環境整備の必要性を念頭に、原子力産業界が抱える課題解決の鍵を握る「新規建設」をプログラムの軸に据え、各セッションでは資金調達・投資回収スキーム、サプライチェーンおよび人材確保・育成をテーマに産業界の取り組みと課題解決の方向性について示唆を得る機会となった。また、福島の地元関係者の復興努力を共有するとともに、将来を担う若手世代と原子力産業の未来を展望する場ともなった。
開会セッションでは、当協会の三村会長は、新規建設の具体化・早期実現は、原子力の持続的かつ最大限の活用のため必要不可欠であると同時に、産業界が直面する諸課題を解決する上での鍵であると述べた。あべ文部科学大臣は、将来的な原子力人材の確保のため、人材育成が大変重要であると認識を示し、地域の大学や高専、専門高校などを拠点とし、地域のニーズに応じた人材育成に、産学連携で取り組みたいと語った。竹内経済産業大臣政務官は、次世代革新炉の開発・設置を進めるには、サプライチェーンと人材が必須の要素であり、原子力の基盤を維持するためには、部品の供給体制の維持や現場の技術の継承、人材の確保・育成が重要であると述べた。基調講演では、日本経済団体連合会の十倉会長は、わが国としては、次世代革新炉開発に向けて、GX経済移行債を活用するなど、政府が前面に出て、今までにないような大規模な投資を進め、開発のペースを大幅に前倒しすべきと言及した。バトン・スピーチでは、コンステレーション社のスタンケ氏は、閉鎖したパリセード原子力発電所およびクレーン・クリーン・エネルギー・センター(旧スリーマイルアイランド1号機)は再稼働に向け動き出し、米国史上初の歴史的な動きであると紹介した。続く、原子力業界のバックグラウンドを持つマイクロソフト社のマノハラン氏は、同社は、世界中の電力が100%カーボンフリーで供給される未来を目指しており、AIやクラウドなどのデジタル技術を活用し、原子力産業のプロセス効率化、安全性・信頼性の向上を支援していると述べた。
初日の「ファイヤーサイドチャット」では、日本原子力産業協会の増井理事長がフラマトムジャパン株式会社のコルディエ代表取締役社長からフランスや英国での経験を引き出し、新規建設を俯瞰的に捉え、続く各セッションで扱う資金調達・投資回収、サプライチェーンおよび人材確保・育成に係る議論への橋渡しとなるような問題提起や課題を共有した。
「セッション1」では、新規建設に向けた事業環境整備が急務であることが指摘された。また、安定したサプライチェーンと人材供給の確保、国による明確なビジョンと戦略が不可欠であると認識が共有された。欧米の事例や過去の教訓からプロジェクト管理やリスク配分の適正化が重要であると述べられた。特に、複数基を継続的に建設する「フリートアプローチ」の有効性や民間資本を引き込むための制度的支援の必要性が指摘された。モデレーターの樋野氏は、米国および英国の事例は非常に参考になり、日本流に取り入れることが重要であると述べた。また、制度設計を進めるには国民理解が不可欠であり、打ち出の小槌のような簡単なソリューションはないため、身近なところから原子力に対する誤解を解くなどして新規建設に貢献したいと述べた。
「セッション2」では、日本の原子力サプライチェーンの維持・強化に向け、海外の成功事例や教訓を踏まえた課題と対応策について議論が行われた。福島第一原子力発電所事故後の新規建設の中断や再稼働の遅れにより、日本の技術・人材・供給体制の脆弱化が顕在化しており、サプライチェーンの撤退や技能職の減少が深刻であると強調された。これに対し、日本では、製造中止品の管理強化、代替品の探索、一般産業用工業品(CGD)の活用に向けた検討などの取り組みが進められていることが紹介された。また、米国、韓国、フランスからは、国際調達、持続的な建設計画、人材の定量分析による計画的育成などを通じて安定したサプライチェーンを構築している事例が紹介された。モデレーターの伊原氏は、各国がそれぞれの状況下で経験を積んでいることが良くわかり、日本の原子力産業界にとってのヒントと教訓を得ることができたと述べた。また、これを貴重な財産として、次の世代につなげられるような基盤を産業界の皆さまと築いていきたいと考えを示した。
「セッション3」は、2部構成で進行され、まず東京電力より福島第一原子力発電所の廃炉の進捗状況の報告にて、2号機での初の燃料デブリ試験的取り出しの成功およびALPS処理水の放出も安全基準内で順調に進んでいることなどが説明された。その後、福島の復興状況に焦点を当て、福島で暮らし・働く人々による講演および意見交換にて、福島復興の課題と展望が共有された。復興については、住民や移住者が新しいコミュニティ形成や自然農業などに取り組む中、教育・福祉・住宅供給の課題が依然として大きいことが示された。福島には人が戻っていないというニュースが流れると、その原因はあたかも廃炉が不安であるかのように捉える方もいるが、実際は住宅供給がまったく足りておらず、戻ろうと思っても家がない問題があることが紹介された。モデレーターの開沼氏は、福島から国内外へ発信していく「for福島からfrom福島」という新たなフェーズに入っていると結んだ。
二日目の「ファイヤーサイドチャット」では、カナダ若手技術者のベイク氏および東京科学大学准教授の中瀬氏が自身の経験を通じて原子力分野の多様なキャリアの可能性と魅力を語り、次世代に向けた力強いメッセージを発信した。カナダで実務とYouTubeを用いた教育的発信の両面に携わるベイク氏は、30年ぶりの新規建設において、原子力以外の分野から人材の参入が進んでいることを紹介し、日本においても新規建設が進めば新たなキャリアパスが生まれると述べた。中瀬氏は、原子力分野では幅広い視野、国際感覚が重要であると述べた。また、社会に対してわかりやすい言葉で技術情報を発信することは、原子力に対する社会的理解を深め、信頼醸成を助ける、研究教育機関の大切な使命だと語った。学生には、自らの研究や仕事の意味を考えるよう助言し、誇りを持って業界に飛び込んでほしいと訴えた。
「セッション4」では、前半に山路氏をモデレーターに招き、国内外の若手技術者による講演後、学生パネリストを交えたグループディスカッションにて、学生と共に原子力産業の未来を展望し、業界の最前線で活躍する技術者が最新技術やキャリアの魅力を紹介しながら、多様な人材の参画による新規建設の可能性が語られた。講演では、革新的原子力技術の進展や多様な専門分野の活躍の場、大規模プロジェクトを通じた社会貢献などの魅力が示された。学生を含めたパネルディスカッションでは、モチベーション維持といった課題にも関心が寄せられた。モデレーターの山路氏はセッションの締めくくりとして、学生には将来についてしっかり考える時間を持ってほしいと述べた。また、原子力の場合、学部4年生頃から本格的に専門に触れることが多いため、企業の皆さまにも、この貴重な数年間を学生が十分に考え抜けるよう支援してほしいと呼びかけた。
「閉会セッション」では、当協会の増井理事長からは、この二日間の議論を通じて、原子力産業界だけでなく、産業界の中での新規建設に向けた高い期待と原子力に対する変化の兆しを強く感じたと述べ、この変化の兆しをさらに確実なものとし、さらには変革につなげることが、当協会の重要な仕事だと改めて感じた次第であると語った。また、学生に対して、原子力分野の仕事は、人々の暮らしを良くして、持続可能性を高める社会貢献のための仕事だと認識を示し、やりがいと歯ごたえが揃った仕事がたくさんあり、その先には、自己成長と自己実現の機会があるため、ぜひ今後とも原子力に興味を持っていただきたいと締めくくられた。
第57回大会参加者の声
VOICES OF THE 57TH ANNUAL CONFERENCE PARTICIPANTS
カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備の中で、ファイナンスの重要性を改めて認識しました。
福島第一原子力発電所の現状に関するプレゼンは定期的に拝聴したい。復興の状況もリアルに伝わってよかったです。
IAEAのような国際機関の方の話を聞ける貴重な機会なので、引き続きお願いしたいです。
若手として参加し、自身の業務では得られない貴重な知見に触れることができ、非常に有益でした。
連絡先
CONTACT US
(一社)日本原子力産業協会 国際部
Tel:03-6256-9313
Fax:03-6256-9310
Email:58th-annual@jaif.or.jp
〒102-0084 東京都千代田区二番町11-19 興和二番町ビル5F
過去の大会
ARCHIVES
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第57回原産年次大会(東京)
2024年4月9日(火)~10(水)
東京国際フォーラム ホールB7よりオンライン配信併用
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第56回原産年次大会(東京)
2023年4月18日(火)~19(水)
東京国際フォーラム ホールB7よりオンライン配信併用
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第55回原産年次大会(東京)
2022年4月12日(火)~13(水)
東京国際フォーラム ホールB7よりオンライン配信併用
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第54回原産年次大会(東京)
2021年4月13日(火)~14(水)
東京国際フォーラム ホールD7よりオンライン配信
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第53回原産年次大会(東京)
2020年4月20日(月)~21(火)
東京国際フォーラム ホールB7
※新型コロナウィルス感染症による中止。
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第52回原産年次大会(東京)
2019年4月9日(火)~10(水)
東京国際フォーラム ホールB7
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第51回原産年次大会(東京)
2018年4月9日(月)~10(火)
都市センターホテル・コスモスホール
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第50回原産年次大会(東京)
2017年4月11日(火)~12(水)
東京国際フォーラム ホールB7
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第49回原産年次大会(東京)
2016年4月12日(火)~13(水)
東京国際フォーラム ホールB7